1年で最も昼が長くなる「夏至(げし)」は、季節の節目として古くからさまざまな風習や食べ物が受け継がれてきました。地域によって食べるものや行事が異なるのも夏至の面白いところです。この記事では、夏至に食べる食べ物の意味や由来、夏至の期間に行われる行事と行事食、海外の夏至の風習まで、網羅的にわかりやすくご紹介します♪
夏至とはどんな行事?期間はいつからいつまで?

夏至は二十四節気の一つで、1年のうち最も昼の時間が長くなる日を指します。毎年6月21日頃にあたり、6月21日頃から7月7日頃(小暑の前日)までの約15日間の期間です。暦の上では夏の真ん中ですが、気温のピークはまだ少し後なので、梅雨の時期と重なることも多いです。夏至は、農作業の節目でもあり、古くからさまざまな風習や行事と結びついています。夏の本格的な始まりを意識する時期として、日本各地で特徴的な食文化が育まれてきました。
夏至に食べる定番の食べ物と意味・由来

夏至に食べる食べ物や行事食について、それぞれなぜ食べられるのかを紹介します。
冬瓜(夏バテ予防の夏野菜)

夏に旬を迎える「冬瓜(とうがん)」は、その名に「冬」とついていますが、夏至の時期によく食べられる食材です。体を冷やす効果があり、蒸し暑さを和らげる夏野菜として重宝されています。冬瓜の保存性の高さから、かつては冬まで食べられることが名前の由来とされます。夏至のころには、他の夏野菜も含めて、冬瓜は夏バテ予防としてもぴったりの一品です。
カレー(認知を広げ中)

夏至にカレー?と思うかもしれませんが、「夏至にカレーを食べよう」というキャッチコピーがあります。「夏至カレー」は、京都市のカメラマン中田絢子さんが始めた取り組みで、日が最も長いこの日を楽しむきっかけとして、好きなカレーを食べることを“マイルール”にしたのが始まりだそう。SNSでの呼びかけから少しずつ広がり、ポスターやTシャツの制作、イベント開催、大手企業とのコラボにまで発展。野菜たっぷりのカレーは、暑さで食欲が落ちがちな時期にぴったり。スパイスの香りが食欲を刺激し、夏バテ防止にも効果的です。
夏至の期間にある行事と食べ物
夏至の期間(6月下旬〜7月初旬)にある行事と、それぞれの行事食を紹介します。地域ごとに特色のある行事食があって面白いです。
夏越の祓(6月30日)

夏至から10日ほど後の6月30日には「夏越の祓(なごしのはらえ)」が行われます。これは一年の半分が過ぎた日に半年間の厄を祓い、残り半年の無病息災を願う神事です。全国の神社で「茅の輪くぐり」などの行事があり、この日に合わせて特別な食べ物をいただく習慣もあります。
水無月(京都)
夏越の祓の時期に食べられる和菓子として「水無月(みなづき)」があり、特に京都で食べられています。白のういろう生地の上に小豆を乗せた、三角形をした和菓子です。上の小豆は悪魔払いの意味があり、三角の形は暑気を払う氷片を表しています。昔の宮中では旧暦の6月1日に「氷の節句」と呼ばれる年中行事があり、氷室(氷や雪を保存しておく保管庫)に保存しておいた冬の氷を取り寄せ口に含むことで暑さを払っていましたが、氷は貴重だったため庶民には氷を食べることはできず、氷に似たお菓子(水無月)を食べることで暑気払いをしたという説があります。
夏越ごはん
新しく提唱されている行事食として「夏越ごはん」が注目されています。雑穀ごはんに夏野菜のかき揚げをのせ、しょうが風味のだしをかけたもので、暑さで疲れがちな夏に合うメニューです。
2015年に公益社団法人米穀安定供給確保支援機構(米穀機構)が提唱し、ごはん食の魅力を見直し、消費拡大を図る目的で広報活動が行われ、普及が進んでいます。夏越ごはんは、①粟や豆などを使った雑穀ごはん(白米でも可)、②夏野菜で作る茅の輪をイメージした丸い食材、という2つの要素が入っていればOK。また、米穀機構は「夏越の祓」が行われる6月30日を「夏越ごはんの日」として記念日登録されています。
半夏生(7月2日頃)

夏至から数えて11日目(7月2日ごろ)を「半夏生(はんげしょう)」といい、日にちは変動します。半夏という薬草が生える頃で、七十二候の1つ「半夏生」。梅雨の終わりの頃にあたり、農家にとってはこの日までに「畑仕事や田植えを終える」目安の日で農作業を一段落させる節目の日とされています。そんな半夏生にも各地で食べられる食べ物があります。
タコ(関西)
関西地方にはタコを食べる風習があり、なぜ半夏生にタコを食べるかというと、半夏生=ちょうど田植えが終わる時期なので、稲の根がタコの足のようにしっかりと根付きますように。稲穂がタコの吸盤のように立派に実りますように。と稲作の成功の願いを込めて食べられます。
半夏生餅(奈良・大阪)
半夏生餅(はんげしょうもち・はげっしょうもち)は、関西の奈良県や大阪・河内地方などで、半夏生に食べられる伝統的な行事食です。田植えが終わり、小麦の収穫も一段落するこの時期に、農作業の無事と田の神さまへの感謝を込めて作られます。つぶし小麦ともち米を合わせてついた餅で、「小麦餅」や「さなぶり餅」とも呼ばれ、きなこをまぶして食べるのが一般的です。現在でも和菓子店などで販売されています。
焼き鯖(福井)
福井県大野市では、半夏生に焼き鯖を丸ごと1匹食べる風習があり、「半夏生さば」と呼ばれています。この習慣は江戸時代に始まり、藩主が田植えを終えた農民たちの疲労回復とスタミナ補給のために脂ののった鯖を食べるよう奨励したことが由来です。大野は内陸に位置していますが、当時は海沿いの越前海岸に飛び地を持っていたため、新鮮な鯖が手に入りました。冷蔵技術がない時代には貴重なごちそうで、今でも焼き鯖はスーパーなどの店頭で販売され地域の夏の風物詩として親しまれています。
うどん(香川)
香川県では、田植えが終わる半夏生に、その年に収穫された麦を使ってうどんを打ってみんなに振る舞い、田植えの労をねぎらっていた習慣があります。この風習があることから、本場さぬきうどん協同組合は昭和55年に半夏生にあたる頃である7月2日を「うどんの日」と制定しています。
海外の夏至の風習と食べ物

夏至は世界中で祝われており、特に北欧やヨーロッパでは「夏至祭」として盛大なイベントが行われます。スウェーデンでは新じゃがのボイルやニシンの酢漬け、サワークリーム、いちごのケーキなど伝統料理を食べるそう。花冠をつけてダンスや歌を楽しみます。フィンランドでは焚き火を囲み、家族でサウナを楽しむ習慣もあるそうです。
夏至を感じる食べ物で季節の節目を楽しもう
夏至は自然の移り変わりを感じる大切な節目であり、地域ごとに受け継がれてきた行事食からは、昔の人々の知恵や願いが伝わってきます。冬瓜やカレーをはじめ、夏越や半夏生に食べる料理には、健康や五穀豊穣への願いが込められています。家庭でも気軽に取り入れられる食材が多いので、季節の食文化を感じながら、夏を元気に迎える準備をしてみてはいかがでしょうか。
コメント