行事食は、季節の移ろいや文化を感じる大切な日本の食文化です。お正月のおせちやひな祭りのちらし寿司など、行事食には一つひとつ意味が込められています。伝統的な行事食にはよいところがたくさんあり、家庭だけでなく施設やお店にとっても大事な役割があります。
この記事では、行事食の定義や役割、活用法などをわかりやすく解説します!日々の暮らしに少しの彩りを添えるハレの日ごはんをぜひ取り入れてみて下さい♪
行事食とは?ー特別な行事に食べる特別な料理や食材
行事食(ぎょうじしょく)とは、その名の通り、特別な行事のときに食べる、ちょっと特別な料理や食材のことです。「この行事はこれを食べよう!」というもの。たとえば、お正月に食べるおせち料理や、節分に食べる恵方巻きが有名です。
行事食には、健康を願ったり、豊作を祈ったりといった願いが込められています。また、家族や地域のみんなが一緒に食べることで、絆を深めたり、伝統を次の世代に伝えたりする大切な役割もあります。日本には、一つの行事でも地域ごとに異なる行事食があることもあり、日本の食文化の豊かさを象徴していますね!
そんな行事食について詳しくみていきましょう!
行事食の定義
行事食の定義をいくつか参照して、行事食とは何かを考えてみます。
季節ごとの行事やお祝いの日に食べる特別の料理を「行事食」といいます。行事食には家族の幸せや健康を願う意味がこめられていることを知っていますか。
引用:農林水産省
それぞれの年中行事に合わせて食べる慣わしのある食事。四季折々の旬のもの、健康によいもの、神事に由来するものなど、由来はさまざま。桃の節句の菱餅、春の彼岸のぼた餅、大晦日の年越しそば、など。
引用:実用日本語表現辞典
行事食(ぎょうじしょく)は、伝統的に受け継がれた祭事、行事、季節の節目の際に食される特別な料理と食材である。家族の無病息災と幸せを願う意味があり特定の時期に用意される。宗教行事や古事が発祥に関わっているものも多く、何かを象徴したり、風習が伴なったり、お供えとして使用されるものが多く、人々の生活様式、食文化、民間伝承に深く根ざしている。
引用:Wikipedia
参照元によって内容にばらつきはありますが、共通することとしては「行事」「料理」「特別」「家族」「願う」等のワードがあげられます。
では、行事食の「行事」とは一体何を指すのでしょうか。同じような言葉がいくつかあるので、紛らわしい言葉をあげて違いをみてみました。
行事食の「行事」とは?ー年中行事、歳事、祭事、催事、ハレの日
行事食の定義にもあった「行事」ですが、様々な言い回しがあります。それぞれの意味から、「行事食」の行事にはどれがあたるのかを考えてみます。
- 年中行事(ねんちゅうぎょうじ)…一定の時期に毎年慣例として行われる儀式や催し物。初め宮中の公事 (くじ) についていったが、のち民間の行事や祭礼にもいうようになった。 (引用:goo辞書)
- 歳事…一年中の出来事。一年中の行事。(引用:デジタル大辞泉(小学館))
- 祭事…祭りの行事。神事。(引用:デジタル大辞泉(小学館))
- 催事…特別な催しごと。展示会・特売会など。(引用:デジタル大辞泉(小学館))
- イベント…出来事。催し物。行事。(引用:デジタル大辞泉(小学館))
- ハレの日…ハレの日は、日常生活とは違った「特別な日」のこと。もともとは、成人式、卒業式、お食い初め、還暦の祝いといった人生の節目にあたる「人生儀礼」や、正月、節分、花見、大晦日、五節句などの「年中行事」を指す言葉。(引用:ヤマキかつお節プラス)
このように、「行事」と言っても様々な言葉があり、行事食の「行事」はこの中の全てを含ませるとした場合、「日常とは違うイベント時に食べられる食事」ということになります。昔から伝わる日本の伝統行事(お正月など)も、新しく定着したイベント(ハロウィンなど)も、全て含めて「行事」となり、そこで出される食べ物飲み物を「行事食」としています。柔らかい言葉で言い換えるとすると「イベントごはん」です。
行事の種類
行事といっても、色んな行事があります。行事を種類によって分類分けしてみました。
- 季節行事…一年の中でその時期ならではの共通行事。 例)節分、お花見、七夕など
- お祝い行事…成長や長寿、卒業や合格を祝う行事。 例)ひな祭り、七五三など
- 生活行事…生活の中で発生する行事。 例)運動会、夏休みなど
- ギフト行事…イベント時に贈り物をして感謝を伝える行事。 例)バレンタインデー、母の日など
- イベント行事…イベント性が大きい行事。 例)ハロウィン、クリスマスなど
一つのイベントでも複数の分類にまたがる場合もあります。例)敬老の日…お祝い行事でもありギフト行事でもある。
行事食の意味や役割
行事食が今も大切にされ、引き継がれているのには、単なる食事の手段ではなく、各行事や節目において、重要な意味や役割があるからです。行事食の持つ役割をあげてみました。
季節の移ろいを感じることができる
行事食は、四季の変化を食を通して感じることができる機会です。旬の食材を使った料理やその時期、気候に合ったメニューで、自然の移ろいや季節感を感じられます。例えば、七夕に食べるそうめんや、秋に食べる行楽弁当など、それぞれの季節や行事に合った料理を味わうことで、季節の変わり目を五感で楽しむことができます。
特に病院や介護施設などで提供する食事は、なかなか外に出られないという方に、食事から季節を感じてもらうことができます。
食文化や伝統の継承
行事食は、古くから伝わる食文化や伝統を次世代に継承する役割を果たします。日本の中でも地域ごとに特有の行事食やその調理法は、地域のつながりを深める機会となり、子どもたちに食文化を教える場にもなります。世代を超えて受け継がれるってすごいですよね。
願いを込める
古くから伝わる行事食には、家族や自分自身の健康、繁栄、成長、長寿、幸せなどを願う思いが込められていることが多いです。例えば、節分の恵方巻には福がくるように、ひな祭りのちらし寿司には女の子の成長の願いが込められています。
絆を深める
行事食は、家族や友人との絆を深める機会にもなります。普段はなかなか集まって食事をする機会がない場合でも、特別な日に一緒に食事をするよいきっかけになります。家族が集まって食卓を囲む行事食は、心を通わせる大切な時間になり、思い出にも残ります。
日常生活に変化と彩りを与える
行事食は、単調な日常から、生活に彩りを添える役割を持ちます。特別な食事や食卓の飾りつけ、料理の工夫などを通じて、いつもとは違った非日常の体験を楽しむことができます。生活にメリハリが生まれ、気分転換や心の豊かさをもたらして、生活の質が上がることが期待されます。
行事食の機会
行事食はどういった機会で提供されるのでしょうか。ご家庭で家族と一緒に食べる以外にも、様々なシーンで提供されます。
家庭
まずはやっぱり家で家族と食卓を囲む機会です。お祝い事だと一緒に住む家族に加えて、親戚で集まって食べたり、イベントだとお友達を呼んでパーティーをしたり。特に子供が小さい時は、たくさんのイベントがあるので、思い出に残るイベントとなればいいですね♪
施設(学校、保育所、病院、老人ホームなど)
各施設でも行事食の機会があります。学校や保育所、幼稚園では、食育の一環として給食メニューに行事食がでるのはもちろん、昔から地域に伝わるメニューを給食に出すことで、子ども達に半ば強制的に?伝統食を受け継ぐことができます。小さいころ給食で食べて当たり前だと思ってた!ということが大人になってからもありますよね!
病院や老人ホームなどの施設では、特に「季節の移ろい」を感じることができる行事食が重要になってきます。外に出て季節を肌で感じることができない入院、入居者の方に季節を感じてもらうことができます。
企業やお店(外食店、スーパーなどの小売店など)
企業にとっては、販売促進のひとつとして、消費行動の喚起にもつながります。外食店では、期間限定メニューとしてイベントごとに商品開発をして集客したり、食品スーパーでは、自宅で楽しんでもらえるようにメニュー提案をして食材を購入してもらったり。他にも、テーマパークでもイベントごとに企画を打って、フードメニューも提供しています。企業にとって、行事食はとっても大事な商機となっています。
年中行事と行事食
では、どんな行事に対してどんな行事食があるのでしょうか。主要行事を簡単に紹介していきます。
五節句
五節句(ごせっく)とは、日本の伝統的な年中行事で、季節の変わり目や自然のサイクルを祝う特別な日です。もともと中国から伝わった「陰陽五行説」に基づき、古代中国では多くの節句が設けられましたが、日本では江戸時代に特に重要な5つの節句:1月7日(人日)、3月3日(上巳)、5月5日(端午)、7月7日(七夕)、9月9日(重陽)が公式に定められました。日付は共通して「奇数」が重なり、これは陰陽五行説における「陽」の象徴とされ、邪気を払い、健康や幸福を祈るための行事が行われます。
現在日本では5月5日の「端午の節句」だけが祝日として残っていますが、他の4つの節句も伝統行事として大切にされており、地域や家族で季節のものを神前にお供えし、邪気を払い、家族の健康や幸福を祈る習慣が続いています。節句の日には、行事食を食べたり飾り付けが行われることが一般的で、特に「初節句」は重要視されています。
<五節句一覧>
日にち | 節句名 | 主な行事食 |
---|---|---|
1月7日 | 人日の節句(七草の節句) | 七草がゆ |
3月3日 | 上巳の節句(桃の節句) | ちらし寿司、蛤のお吸い物 |
5月5日 | 端午の節句(菖蒲の節句) | ちまき、柏餅 |
7月7日 | 七夕の節句(笹竹の節句) | そうめん |
9月9日 | 重陽の節句(菊の節句) | 菊の花、栗、なす |
昔から伝わる日本の行事食
五節句の他にも、日本の行事食はたくさんあります。ここでいう昔から伝わるというのは、元々中国から由来しているけど昔に日本に伝わった行事も含みます。
日にち | 行事名 | 主な行事食 |
---|---|---|
1月1日 | 元日(お正月) | おせち、お雑煮 |
2月3日(2月2日) | 節分 | 恵方巻 |
2月(2月最初の午の日) | 初午 | いなり寿司 |
7月初旬(夏至から11日目) | 半夏生 | たこ、焼き鯖 |
7月(夏土用の丑の日) | 土用の丑の日 | うなぎ、しじみ |
8月13~16日 | お盆 | 精進料理 |
9月~10月の満月の日 | 中秋の名月(お月見) | 月見団子 |
12月22日前後 | 冬至 | かぼちゃ |
近年になって伝わった世界の行事食
日本で昔から伝わる行事以外にも、現在では世界各国から伝わって日本で定着したイベントもあります。
日にち | 行事名 | 主な行事食 |
---|---|---|
2月14日 | バレンタイン | チョコレート |
4月(春分後の満月の次の日曜) | イースター | 卵 |
10月31日 | ハロウィン | かぼちゃ |
12月25日 | クリスマス | チキン |
年間の行事食を一覧にしてまとめた記事はこちらから♪↓
地域によって異なる行事食文化も面白い
同じ行事の行事食でも、地域によって違う料理や食材を使うことがあります。地域独自の文化を持つ行事食の一例をあげると、
- 節分…撒く豆が炒り大豆か殻付きピーナッツか
- ひな祭り(桃の節句)…桜餅が長明寺か道明寺か
- お月見(中秋の名月)…団子の形が丸かしずく型か里芋型か
など。他にも調べてみると色々あるので、他の地域の行事食を食べてみるのもいいかもしれません♪
地域による行事食の違いをまとめた記事はこちらから♪↓
行事食を取り入れて日常に彩りを
季節の行事に合わせた料理やお菓子を作ることで、季節感や文化を感じることができ、毎日の食卓に彩りを加え、日常の中で小さな喜びを見つけることができたらいいですね♪行事食というと少しお堅いイメージがあるかもしれませんが、献立を全て作るのではなくて、1つメニューを取り入れてみるなど、気軽にはじめてみても♪
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